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優しい人

伊達政宗×妻


「・・・まさ、宗さま・・・」

 
手をさ迷わせば、しっかりと。

大きな手のひらが、わたしの手を包み込む。
ちらり、と視線を動かすと、思い切り顔を歪めた政宗様が枕元に腰をおろしていた。
 
 
「・・・政宗様、それではまるで・・・小十郎様、でございます・・・眉間、の皺・・・」
 
小さく笑う。
するとしかめっ面のまま、顔を逸らされてしまった。
 
「うるせえ・・・」
 
そのまま横を向いて、しかし手は握ったまま。
政宗様はうつむいてしまった。
同じ部屋に控えていた小十郎様が、ため息をひとつつき、席を外す。
 
部屋が、しん、と静まり返った。
 
 
 

 
『お前はほんとに、よく泣くな』
 
幼い頃から泣き虫だった私。
政宗様はよく、私の泣き顔を見ては、半ば呆れたように笑っていた。
 
『それは私が生きている証です。
政宗様にも、辛い時、悲しい時はございますでしょう』
 
私が膨れて言い返すのも、いつものこと。
そのたび政宗様は、こう言うのだ。
 

『俺は泣けねえ。この国背負った時に、人間らしい感情は全部捨てた。

だから、俺が泣けねえ分は、お前が泣いてくれよ』
 

そしたら、俺の痛みも癒える。
 
 
 

 
そう言っては、私の涙をぬぐってくれていた政宗様。
 
政宗様の手をすり抜け、頬に手を伸ばした。
ゆっくりと、政宗様の頬に触れる。
 

 
「・・・政宗様も、皆となにも変わらない・・・おなじ、人でございましたね・・・」
 

それとも。
それは、私の分でございますか。
 
 

「・・・うるせえよっ・・・」
 
かすかに濡れた私の手の平に、政宗様も手を重ねた。
 

 
「・・・まさむ、ね様・・・きっと、また・・・会えまする・・・

 きっと・・・来世・・・で、だから・・・いつまでも、生きて・・・わたし、を」
 


迎えに、来てくださいね。
 
 


暖かい温もりを手に感じながら。
私は、ゆっくりと目を閉じた。
 

 
 
命あらば 逢うこともあらむ 我がゆえに
    はだな思ひぞ 命だに経ば
(私のために、そんなに嘆かないでください。
命だけ長らえていれば、きっとまた、逢えましょうから。)
 
 
だからお願い、泣かないで
私には、その涙を拭って差し上げることも、できないのです
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誕生日:
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