寒い寒い、朝だった。
早朝だからまだ薄暗く、周りに人の気配もない。
「じゃあ、行ってくるぜ」
白い息を吐きながら、あなたが家の外に出る。
腰には二本、額には鉢金。
歩くたびにカチャカチャと音をたてる、鎖の胴着。
あなたについて、私も茂を抱えて外に出た。
かすかにだけど、雪が降っている。
あなたは立ち止まって振り返ると、茂の頭を優しくなでた。
「茂・・・元気でな。母上の言うこと、ちゃんと聞くんだぞ」
そして、お前もな、と私のお腹に手を当てた。
あと三月ほどで、生まれるはずの新しい、命。
あなたに抱いて欲しかった。
「まさ、ごめんな。こいつらのこと、頼む」
最後にあなたは、私の目をまっすぐ見て、そう言った。
私が小さく頷くと、あなたは私を茂ごと、優しく抱きしめた。
きっとこれが最期の、あなたのぬくもり。
茂が苦しそうにもがくと、あなたはゆっくり腕を離した。
「旦那はん・・・どうか息災で・・・いつかきっと戻ってきてや・・・」
私はそれだけ言うと、深々と頭を下げた。
どんどん遠くなっていく、あなたの足音。
一体、今までどれだけ、こうやってあなたを見送っただろう・・・。
「うっ・・・ふぇ・・・佐之・・・助はん・・・」
あなたの影が見えなくなると、我慢していたものが一気に溢れ出した。
東の空には暁が、赤く切なく、広がっていた。
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寒い寒い、朝だった。
早朝だからまだ薄暗く、周りに人の気配もない。
「じゃあ、行ってくるぜ」
白い息を吐きながら、あなたが家の外に出る。
腰には二本、額には鉢金。
歩くたびにカチャカチャと音をたてる、鎖の胴着。
あなたについて、私も茂を抱えて外に出た。
かすかにだけど、雪が降っている。
あなたは立ち止まって振り返ると、茂の頭を優しくなでた。
「茂・・・元気でな。母上の言うこと、ちゃんと聞くんだぞ」
そして、お前もな、と私のお腹に手を当てた。
あと三月ほどで、生まれるはずの新しい、命。
あなたに抱いて欲しかった。
「まさ、ごめんな。こいつらのこと、頼む」
最後にあなたは、私の目をまっすぐ見て、そう言った。
私が小さく頷くと、あなたは私を茂ごと、優しく抱きしめた。
きっとこれが最期の、あなたのぬくもり。
茂が苦しそうにもがくと、あなたはゆっくり腕を離した。
「旦那はん・・・どうか息災で・・・いつかきっと戻ってきてや・・・」
私はそれだけ言うと、深々と頭を下げた。
どんどん遠くなっていく、あなたの足音。
一体、今までどれだけ、こうやってあなたを見送っただろう・・・。
「うっ・・・ふぇ・・・佐之・・・助はん・・・」
あなたの影が見えなくなると、我慢していたものが一気に溢れ出した。
東の空には暁が、赤く切なく、広がっていた。
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